韓国料理でよく使われる、独特な食材のひとつに「トラジ」( )がある。「トラジ」とは桔梗(ききょう)のことで、古くから東アジアの山野に広く自生していた多年草で、夏〜秋にかけて青紫または白色の美しい花をつける。食材にするのは根の部分。4〜5年ものの肥大した根を使い、中でも「白(ペッ)トラジ」といって白い花をつける桔梗の根が重宝される。
トラジは古くから韓国の人々の暮らしにとけこんできた大変なじみ深い植物で、京畿道(キョンギド)地方の有名な民謡に、女たちが籠をもって春の野山にトラジを掘りにいく情景を歌った「トラジ打令(タリョン)」がある。旬は春、または葉を落とした秋とされる。
日本では桔梗を食する習慣がほとんどなく、材料入手が困難だったことから、日本の韓国料理店などではごく最近までトラジを出すところが稀だったが、近年の韓国料理ブームで食材としてかなり出回るようになった。 |
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■トラジの薬効 |
トラジはきわめて薬用効果の高い食材で、有効成分としては「サポニン」という配糖体の一種が含まれる。サポニンは高麗人蔘や豆類にも多く含まれ、抗がん作用やコレステロール低下作用、免疫を高める作用などさまざまな優れた作用が注目されている。
トラジに含まれるサポニンの場合、気管支系に作用して痰を出し、咳を鎮め、熱を下げるなどのはたらきをする。また、体内の化膿したウミを排出する「排膿作用」もある。 |
■トラジを使った韓国料理
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トラジは韓国において、なじみ深くはあっても高価な食材に属するもので、トラジを使った料理は、地味ながら高級なおかずという認識がある。
現在韓国では、栽培もののトラジが主流。採取後、黒い表皮をこそげとって洗い、細長く切るか縦に裂いた生トラジや、それを乾燥させたものが多く出回っている。トラジは独特の苦味があるため、生の場合はしばらく水に晒(さら)したり、塩もみして洗ったり、さっと茹でたりして苦みを抜くことが多い。乾燥トラジの場合は、茹でてもどしてから使う。 |