日本語で「麦(むぎ)」というと、大麦、小麦、ライ麦、燕麦(えんばく)など、「〜麦」のつく類似穀物を総称するが、韓国語ではこのような総称はなく、それぞれ大麦なら (ポリ)、小麦は (ミル)、ライ麦は (ホミル)、燕麦は (クィリ)といった具合に、別々の呼び方をする。 |
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■韓国における大麦の分類 |
大麦は、韓国では大きく次の二つに分類されている。
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(コッポリ)…皮麦(かわむぎ)。
二条大麦の系統で、皮が実にくっついていてはがれにくい品種。耐寒性が強く、主に慶尚道(キョンサンド)地方で栽培される。朝鮮半島には古く中国からもたらされたといわれる。
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(サルポリ)…裸麦(はだかむぎ)。
六条大麦の系統で、皮が実からはがれやすい品種。比較的耐寒性が弱く、全(チョル)羅(ラ)道(ド)地方で多く栽培されている。日本からもたらされたといわれる。
また、種をまく時期によって、「春まき」「秋まき」に分けられることもある。韓国では大部分が「秋まき」だが、冬の寒さが厳しく冬越しが困難な地域(京畿道(キョンギド)北部、江原道(カンウォンド)〜中部の山岳地帯の一部)では「春まき」が栽培されている。
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■大麦の使われ方.1 〜ヨッキルム
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良質の大麦は、発芽後すぐに乾燥させて麦芽を作る。この乾燥麦芽のことを韓国語で「ヨッキルム」( )といい、ビール、コチュジャン、水飴、シッケ( :韓国式甘酒)などを作るうえで重要な材料となる。また、一般家庭用のヨッキルムも多く市販されており、これを使ってコチュジャンやシッケなどが家庭でも手作りされる。 |
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■大麦の使われ方.2 〜ミスッカル |
もうひとつ、大麦を使った韓国のポピュラーな食品に、「ミスッカル」( )または「ミシッカル」( )と呼ばれる、独特なものがある。
これは、米粉、麦粉、豆粉などを混ぜ合わせた、いわゆる「穀粉ミックス」のことで、原料はそれぞれ蒸すか炒るなどの下処理が施されている。これを水や湯、牛乳などで溶いて、好みで蜂蜜や砂糖を加え、朝食や間食にする。
ミシッカルはもともと韓国で食されてきた伝統食品だが、最近の健康ブーム、ウェルビーイングブームで再脚光を浴び、ワンランクイメージを上げた「膳食」( :ソンシッ)という名で、高級デパートで販売されるようにもなった。原料も従来の穀類に加えて、はとむぎ、玄米、とうもろこし、黒米、黒豆、ごま、えごま、山芋、青菜、抹茶、落花生、くるみ、栗、銀杏、昆布、松葉、よもぎなど、実にさまざまなものが取り入れられ、各人の体質や季節、体調に合わせて配合される。
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