原産地は中近東、地中海、中国などの説がある。サンチュの歴史は古く、古代エジプト時代から栽培されていた。朝鮮半島には三国時代(5〜6世紀ごろ)にサンチュがもたらされ、中国では隋代に高句麗から高価なサンチュの種を入手したという記録が残る。また元代の詩人、楊允孚(14世紀中ごろ)が「元宮詞」という詩で高麗のサンチュの香り高さを詠い、「高麗の人は生野菜でご飯を包んで食べる」という解説を添えている。
サンチュはレタスの変種で、日本名を「掻(か)きちしゃ」あるいは単に「ちしゃ」という。レタスのように丸く結球せず、平らな葉を1枚ずつ下から掻(か)き取っていくことからついた名だが、日本でも古く奈良時代から栽培されており、「乳草(ちちくさ)」から音が転じて「知佐(ちさ)」→「ちしゃ」となったという。
一方、韓国名「サンチュ」については、李氏朝鮮王朝時代の料理書『名物紀略』(黄泌秀(ファンピルス)著、1870)に、「サンチュは生で食べられることから“生菜(センチェ)”といい、この“生菜(センチェ)”が“サンチュ”となったと思われる。サンチュは
“萵苣(ワゴ)” “プル” “生(セン)チ” “千金菜(チョングムチェ)”
“越江草(ウォルガンチョ)”などとも呼ばれる」という記述がみられる。 |
■サンチュの栽培 |
|
サンチュは病虫害に強く、日光さえ当たれば比較的簡単に栽培できる。大きくなった外葉から順に掻き取って食べられるため、1株から長期間にわたり大量に収穫することができる。近年、韓国でも日本でも「チマサンチュ」( )という名で種が流通しており、葉が青い品種と赤くなる品種がある。どちらも春まきと秋まきがあり、ハウス栽培、水耕栽培も含め一年を通して栽培される。
韓国の慣用句に「秋のサンチュは戸を閉めて食べる」( )というのがあるが、これは秋のサンチュが格別おいしいため、食べているところを人に見られないように戸を閉める、という意味が含まれている。 |
|
■サンチュを使った韓国料理 |
(サンチュサム):サンチュの包みご飯。
サンチュにご飯、薬味味噌、おかずなどを包んで食べる。薬味味噌はサムジャン( )といって、味噌やコチュジャン、しょうゆ、にんにく、ごまなどを混ぜ合わせて作ったり、炒めたひき肉を加えたりと、さまざまなサムジャンがあるが、近年では出来合いのサムジャンも市販されている。
(サンチュセンチェ):サンチュのサラダ。
しょうゆ、酢、ごま油、にんにく、粉とうがらしなどを混ぜ合わせたドレッシングで和える。サンチュのほかにきゅうり、わかめ、玉ねぎなどを入れることもある。 (サンチュムッチム)、 (サンチュコッチョリ)ともいう。
|
 |
■サンチュを食べると眠くなる? |
|
韓国では、サンチュを食べると眠くなるといって、ドライバーや受験生はサンチュを食べるのを避ける傾向がある。これは、サンチュなどのレタス類に含まれる「ラクチュコピクリン」(ラクトカリウム)という成分のため。茎や葉の切り口から出てくる乳白色の液体がそれで、軽い催眠、鎮静、鎮咳、去痰作用がある。 |
|
|
|